半沢直樹

半沢直樹を読み返してみた

韓国では社会が”Metoo”の嵐で、何らかの権力を笠に女性を暴行してきた男たちの悪行が暴かれてまくっている。事件の性格上、何とも複雑な気分になるが、いまだに社会の闇の中で人権を蹂躙され苦しまなければならない人がいた、もしくはいるという点は残念で怒りがこみ上げてくる。

そういう社会事情を汲んで、とかではないが、不当な権力に立ち向かう銀行員半沢直樹の活躍する小説を久しぶりに読み返した。
大ヒットテレビドラマにより知られるところになった人気作家池井戸潤の半沢直樹シリーズは全4巻。そのうち最初に2巻である「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」はテレビドラマの原作となった。人気のうちに幕を閉じたドラマは残念ながら俳優の諸事情もあって続編は作られることがなかった。最終回は完全に続編を意識した幕の閉じ方をしたにも関わらずである。

小説はもちろん続編があり、「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」と前編よりは「ステキ」なタイトルをつけられ半沢直樹の爽快な活躍が描かれている。今回私が読み返したのは、この2冊である。

「ロスジェネの逆襲」では銀行のグループ社である弱小証券会社に出向させられた半沢直樹が親会社の銀行と対峙しつつ、詐欺まがいの手法で敵対的買収をかける会社とコンサル契約をした親銀行から買収をかけられた側の会社を防衛し、いつもの通り倍返しで相手をギャフンと言わせつつ親銀行も救うという内容になっている。読むと「ホリエモン」だとか楽天の三木谷社長などのキャラがモデルのなっているのだろうと思わせられる。

「銀翼のイカロス」では前回の活躍により再び銀行に返り咲いた半沢直樹が、航空会社の担当となり、企業再建を政治利用する政治家や、やはり銀行の闇の部分と対峙しながら半沢は正義を貫くというストーリーだ。

半沢の正義の論理は分かりやすい。仕事人として正しいことをする。それが組織や社会に潜む不義な欲望との間で軋轢を生んだとしても、自分の身が不利な立場に立たされようと仕事人としての矜持を失うことなく進む、そういったことだ。
分かりやすいが、人間それは難しいというのが今日日本で騒ぎになっている森友文書改竄事件などを見てもよく分かる。

国益を守り法を守る公僕としての官僚ではあるが、組織の力により自身の地位が脅かされるときには、その力に屈せざる得なかった、というのが今回の事件に働いた力学であろう。彼らの気持ちもこの小説を読むとよく分かるのである。

小説なので半沢直樹は予定調和的に勇気と信念を持って全ての問題を解決し、大逆転勝利を収めるのだが、現実はそうではないであろう。強い意志と勇気と信念だけでは、巨大な組織の力には抗えない。力に屈しつつも次には苦悩との争いが襲ってくる。そうして小説の中でもそうであったが、現実にも残念ながら自殺者を出してしまったのだ。

日本と韓国の今日的トピックを見ると、誰かに単純に勇気や信念を求めるのは容易ではないが、信義を持ちつつ様々な角度から物事を見つめ理解できる視点を持つことが、迫られている今日なのであろうと考えざる得ないし、自分もそうありたいと思わざる得ない。

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