韓国語の通訳者の悩み

韓国の通訳者が悩むこととは?

最近、通訳のやり方で悩み、ちょっとずつ方向転換をしています。いや、ガバッと方向転換してるのかも知れません。

今までの通訳のスタイル

韓国語は日本語と語順が同じというのは、何度かお話ししましたが、日本語と韓国語の通訳、通訳者も比較的やり易いパターンなのではないかと思います。比較したことはないですが、語順と文法が似ていれば似ているほど、きっとそうだと思います。

ゆえに、頭の中でまるで自動翻訳をするかのごとく機械的に言葉を変換して、口を動かすというやり方をしてきました。これは、時間が短縮されてお客様のコスパが高まり、通訳者が要らぬ主観を入れることなく客観的にコミュニケーションが進むという長所があると考えました。

そもそも、私が通訳をするきっかけも「韓国の通訳さんだと主観が入って、ちゃんとをの言いたいことを伝えてくれているのか不安だ」というニーズがあったからです。なので、できるだけ主観を入れず、空気のような存在になりきる、それが私の通訳のスタイルでした。

思わぬ通訳のつまずき続出

ところが偶然なのでしょうが、最近の通訳案件の中で、私の通訳スタイルではコミュニケーションが、あるいはそれどころかお客様のビジネスや思惑自体がうまくいかなくなるような状況が連続して起こりました。

今まで私がまるで傍観者の如く客観的に通訳をしても不安に思わなかったのは、お客様のビジネススキル・コミュニケーションスキルを信じていたからです。「私などよりは、はるかに場の空気も読んで、時に腹芸なんかでビジネスを進める百戦錬磨の方なんだろう」そう思っていたからです。

実際には、皆さんがそんなはずもなく、完全に私の錯覚・妄想だったわけですが、ついに私の錯覚・妄想が破綻してくるようになったのです。というか、私が考えても、いくら語順や文法は似ていても、ほぼ直訳が可能な言語であっても、人間関係にまつわる言葉の考え方という文化は大きく違います。ちょっと難しい言い方をすると、言葉の持つ辞書的意味と、文脈によって膨らんだ意味、その割合が今の両社会での違いがある、っていうこと。

日本語はよく「ハイコンテクスト文化」だと言われます。

文化人類学者のE・T・ホールの理論における文化の区分の一つで、コミュニケーションに際して共有されている体験や感覚、価値観などが多く、「以心伝心」で意思伝達が行われる傾向が強い文化のこと。一般的に、日本の文化は「空気を読む」ことや「状況を察する」ことが重視されることから、ハイコンテクスト文化であるといわれる。ハイコンテクスト文化に対して、言語による意思伝達に対する依存の強い文化をローコンテクスト文化と言う。

しかし韓国はそれにも増してのハイコンテクスト文化で、「空気を読む」「状況を察する」に加えて、人間関係の状況(力関係・利害対立・背景・繋がり)の脈絡(コンテクスト)の中を把握して意思伝達が行われているように思われます。韓国の方々は、これらの読みが深い傾向にあります。かといって、その能力を全力で自分の有利な方向に使っていくばかりではなく、特に経営者の方々は、人間関係の情という要素、日本の浪花節的要素を重要視する場合もある訳でです。

コンテクストの度合いの違いが、まさに文化の違いとなり、会話のすれ違い現象になってくる、そんな事案が最近連発し、私は頭を抱えてしまいました。

ビジネスの結果につながる文化の通訳者

こんなことが続発するので、きっと私はこれ以上傍観者的通訳ではいけないという考えに至りました。時が来たのです。もうダメです、前のやり方だけでは。

無条件に日本のお客様の言葉を伝えるのは、危険なことがあります。まず韓国側の方が、どのようなタイプなのかを判断する必要があります。どれほどのコンテクストの度合いでコミュニケーションをするタイプの方なのかを。しかし日本のお客様の高度なコンテクストコミュニケーションを駆使されるのであれば、韓国側の相手がどうであれ、私は心配せずに通訳をします。そうでない場合は、両者のコンテクスト依存度、タイプを見極めます。(見極められるか分かりませんが、ここは経験に頼るしかありません)

そうしてお客様の意図・思惑に沿って、私とお客様とで、どのようなコミュニケーションを取っていくか、相談していく形を取るのが、ベストなんだろうと今は考えています。時には韓国社会でのビジネスの戦略も考えることもあります。社会自体がハイコンテクストなわけですから。

コミュニケーションにおいて、あまりコンテクストを重要視されていないお客様の場合、このやり方に疑問を抱かれたり、私に対して誤解をされることも少なくはないだろうとも考えています。

実際の現場では、コミュニケーションやコンテクストに関しての文化論をお客様にご説明する時間もないわけですから、込み入った戦略は奇異に思われてしまうかもしれないからです。

韓国はハイコンテクスト文化なのか?

先ほど「韓国は日本以上にハイコンテクスト文化で…」みたいな表現をしましたが、同時にローコンテクスト文化的なロジカルにハッキリと表現する様相もあります。大陸であったり、儒教文化の歴史的経緯が影響しているのではないかと思いますが、世の中ホント単純ではないですね。日本はムラ社会的ハイコンテクスト文化とでもいうんでしょうか?

どちらにしても日本がグローバルに撃って出るのであれば、自らを、日本文化を客観的に俯瞰し、文化的戦略をも必要とする時にきているようです。

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